228人が本棚に入れています
本棚に追加
三郎はため息をついて空を見上げた。作りものだという夜空。この空は何処へも繋がらず、同じ空の下には父も母もいないと思うと寂しさがこみ上げてきた。それを振り払うように、三郎は龍に大きな声で尋ねた。
「なあ、俺を背中に乗せて飛ぶことって出来る?」
すると龍は三郎に背を向けて屈んだ。それでも結構な高さがあったが、なんとかよじ登ってみると両翼の間に丁度いいくぼみがあったので、三郎はそこに座った。
「スゲー。このまま飛び上がれるの?」
三郎は飛んだ経験があるか聞いてみただけだったが、龍は翼を広げ触れる草木をなぎ倒しながら飛び上がった。三郎が慌てて龍の首に捕まった時には、もう城の屋根を越えていた。物音に気付いた五郎が庭に飛び出してくると、三郎は五郎に向かって叫んだ。
「ちょっと散歩に行ってくる」
五郎が返事をする前に、三郎を乗せた龍は空高く舞い上がって消えてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!