第16章 雄の交わり

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「殺してしまった」 「え?」 「愛してたのに、この手で切り裂いてしまった!」 その場に崩れ声を上げて泣き出した青二の肩にそっと手を置き彼が少し落ち着きを取り戻すのを待ってから、黄龍は尋ねた。 「相手は貴人か? 食事は与えたのか?」 「ああ。何度も与えたよ。あの子の体は私に適応していた」 「切り裂いたって、ズタズタに?」 「まさか……事故だったんだ。誤ってあの子の背中を切り裂いてしまった」 「一度だけ?」 「うん……」 「なんだ。じゃあ大丈夫だよ」 「えっ……本当?」 まだ涙が溢れている青い瞳で振り仰ぐ青二に向かって黄龍はにっこり微笑んだ。 「自分の体液が注ぎ込まれた貴人は、そう簡単に殺せない。うっかり爪でひっかいてしまっても、自分の体ならすぐに傷が消えるのと同じだ。その子は今どこに?」 「洞窟に……」 「一人で放置してきたのか? それは――」 「実は普通の貴人じゃないんだ」
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