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三郎と四郎は言われた通り武器を翳してみた。すると城壁に光のスリットが出来た。
「おおっ、スゲー」
すり抜けて振り返ると、もう光のスリットは消えていて、3人は城の入り口に続く石畳の上に立っていた。空はさっきより暗くなったが、石灯籠が道を照らしていて周囲には庭が広がっているようだ。
「普通に夜やな。木生えとるし」
「ここの空だけ違うの?」
「本来ここには昼も夜もないが、城の上空は朝から夜まで人間界同様に変化する。この城は謎だらけだ。一々驚いていたらキリがない。どうなっているのか俺には答えられないし、知ったところでどうというものでもない。一郎様にも煩わしい質問はするな」
五郎の言葉に、四郎はまた三郎に耳打ちした。
「ほらな、やっぱり一郎さん怖い人や。五郎ちゃんが子供に見えるようなデカイおっさんかな?」
四郎にそう言われてどうやら年齢も実力も自分が一番下らしいと悟った三郎は、不機嫌な顔でただ黙って歩いて行った。
そして3人は城内に入った。長い板張りの廊下。太い木の柱。障子。年代を感じさせる建物だが、手入れが行き届いている。
「中も和風やな。まるで時代劇や」
中庭を越えた所で、五郎は立ち止まった。そしてその場で跪くと、2人にも跪くよう促して障子越しに声を掛けた。
「抜け穴を封印して、三郎と四郎を連れて参りました」
すると中から低く艶のある声がした。
「3人共、入れ」
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