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一郎は、また三郎に注意しようとした四郎に話し掛けた。
「四郎。おまえには急遽抜け穴の龍退治に向かって貰った。我々は大刀家から直接ここに入ったが、別の龍を討伐に行かねばならず、おまえに託した。大儀だったな」
ねぎらいの言葉を掛けられた四郎は少し頬を染めて納得した。
「そうやったんですか。祖父に今すぐ斧持って臥龍山に行け言われて訳もわからず飛んで行ったら龍居てびっくりしましたわ。三郎、あそこは正規の入り口やないんやて」
そう言われると三郎は少し表情を緩めたが、まだ黙っていた。すると五郎が説明を始めた。
「あそこは百年ほど前に龍人が開けた穴だと言われている。塞いでも数十年に一度開かれ、俺の先祖の丹治家の者が封印してきた。最近では13年前だ。その時封印を解いたのは、三郎、おまえの父親ではないかと言われている」
「俺の父が? どうしてそんな――」
「あの時、龍や龍人の気配はなかった。しかも封印は、一瞬開かれただけだ。すぐに戦士の所在を確認したが、剣の戦士だけ確認出来なかった。おまえの父親は、今も行方不明なのだろう?」
「父さんがここに入ったかもしれないと疑っただけで、探してくれなかったの?」
「大刀家にある入り口は、この城と同じく覚醒状態の武器を翳さなければ入れない。そして開いて閉じたばかりの封印は、縫い合わせたばかりの傷と同じだ。ゆえに閉じられなくなる危険性を考慮して捜索は中止になった。剣崎家の家長、おまえの祖父も合意の上だ」
会うことすらなかった祖父。母と結婚した父を許さず勘当した厳格な男。彼の合意など、三郎にとっては無意味だ。それより別のことが気になった。
「龍を倒す為じゃなかったら、何の為に父はここへ?」
「さあな。単純に好奇心かもしれない」
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