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「父はまだここにいるかも――」
行方不明の父親を探し出せるかもしれないという希望を持ちかけた三郎に、一郎は言い放った。
「それはない。剣の戦士が2人同時にこの空間に存在することは出来ない。世代交代は通常二十歳。未成年のおまえが戦士を引き継いだということは、先代はその時に亡くなったのだろう。父親は諦めろ」
三郎の腕に戦士の証が刻まれたのは、今日だ。
それが父の死の瞬間だったと聞いた三郎は、腕の証を反対の手で掴みながら呟いた。
「そんな……今日父さんが死んだなんて……でも父さんには戦士の証はなかったって母さんが……」
「引き継いだのは、今日なのか?」
三郎が唇を噛みしめて頷くと、一郎は彼に命じた。
「それでは実戦は無理だな。城内に訓練場がある。まずはそこで訓練しろ」
今の自分が力不足であることは三郎も自覚していたが、実戦に出る能力がないとあっさり決めつけられると腹が立った。三郎は無言で睨み返したが、一郎の視線は既に四郎に移動していた。
「四郎、おまえも訓練に励め。戦場に連れて行くかは、明日決める」
「はい」
四郎が素直に返事をすると、一郎は再び命じた。
「わかったら行け」
そう言われても何処へ行けばいいのかわからないと五郎を仰ぐと頷いたので、四郎は五郎と共に部屋を出ようとした。しかし、三郎が動かない。
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