第3章 カリスマリーダー

9/12

224人が本棚に入れています
本棚に追加
/962ページ
「へ? あ、はい」 言われた通り四郎は斧を一郎に差し出した。斧を受け取ると、一郎は三郎に命じた。 「四郎がこの斧で倒した龍をここに放つ。三郎、おまえは四郎が戦うのを見ていたのだろう。ならば簡単な課題だ。倒してみせろ。他の者は場外に下がれ」 良く見ると、訓練場の入り口に近い部分は地面の色が違う。そこにいるものは、残像の敵の視界に入らないようだ。 一郎は四郎の斧を高く掲げると、地に振り下ろした。 地が振るえ一瞬静まった後、一郎が斧を上げて後ろに下がると、そこに煙のようなものが集まって来て、それは見る間に三郎が初めて遭遇した龍の姿となった。 「ほんまに残像か?」 本物とまるで変わらぬ迫力。四郎は心配そうに三郎を見た。 三郎は、想像以上にリアルな龍の姿に驚き少し怯えていたが、それを悟られまいと唇をかみ締めて目を見開いていた。その三郎と、龍の目が合った。 残像は三郎を記憶していて、たちまち攻撃をしかけてきた。幻の毒が三郎を襲う。実際に浴びた時と同じ不快感に襲われ、三郎は龍の背後に回った。 狙う場所はわかっている。喉。そこを切り裂けばいい。しかしなかなかタイミングが掴めない。 「クソッ!」 龍は三郎をあざ笑うように剣を交わしながら尾を打ち付けてくる。四郎の真似をしてもダメだ。三郎の手足は四郎程長くないし、悔しいけれど力も及ばない。三郎は龍の背に飛び乗り、暴れる龍の体をよじ登り始めた。剣を弾くゴツゴツとした硬いウロコは、よじ登るには便利だった。三郎は龍に振り落とされることなく、頭まで辿り着いた。 頭頂部に、わずかにウロコのない場所を見つけると、三郎はそこに剣を突き刺した。龍は更に暴れたが、体重をかけて剣を喉まで貫通させると大人しくなった。 そして龍の体は、三郎を乗せたまま地に臥し消えた。まるで、テレビのスイッチを消したように。
/962ページ

最初のコメントを投稿しよう!

224人が本棚に入れています
本棚に追加