224人が本棚に入れています
本棚に追加
/962ページ
「やったな、三郎。頭だけやけど、串刺し成功や」
四郎は拍手して三郎に近付こうとしたが、一郎に引き止められた。
「まだ終わりではない」
そう言うと一郎は場内に入り、三郎に告げた。
「次は今日俺が倒した龍を呼ぶ。戦えるところまで、戦ってみろ」
一郎は自分の刀を振り下ろした。
先ほどとは比べ物にならない衝撃が地を走り、一瞬の後に現れたのは、真っ赤な龍だった。
灰色の龍の三倍はある巨大な龍だ。それでも勇気を出して三郎がその背に飛び乗ると、龍は長い首を捻って三郎に顔を近づけ、口を開いた。
「アチ!」
開いた口から吐き出されたのは、毒ではなく炎だった。幻の炎でも、触れれば熱い。全身に炎を浴びた三郎は龍の背中から転げ落ちた。
子供の龍のように背中から這い上がるのは無理だ。直接首に飛び乗るしかない。
しかし、龍はあざ笑うように天高く舞い、炎を吹きかけてくる。
「チクショー、全然届かない」
ジャンプしてどうにかなる距離ではない。炎から逃げるので精一杯だ。
「もうすぐ消えるぞ」
そう言いながら一郎が場内に入って来た。三郎は焦ったが、龍から目を離さなかった。すると龍の方が三郎から一郎へ視線を移した。その瞬間に三郎は素早く龍に駆け寄り、龍の喉に向かって剣を投げた。
剣は力強く飛んで行ったが、龍に弾き返された。
自分が投げた剣が、倍速で向かってくる。
致命的なミスだ。龍と違って、剣は残像ではない。
最初のコメントを投稿しよう!