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三郎は頬を染めて一瞬呆然としていたが、四郎にからかわれる前に急いで部屋を出て一郎を追いかけた。すると一郎は背を向けたまま黙って自室に入り、風呂場に直行した。
「あれだけ剣を振るえば、自覚がなくても疲れているはずだ。早く湯につかれ」
「う……うん」
先に湯に入った一郎に誘われた三郎は、一郎が視線を外した隙に急いで着物を脱いで湯に入った。無色透明だが、肌に吸い付くような濃い湯で、つかるだけでマッサージされているような心地よさを感じた。
「どうだ。癒されるだろう?」
湯船に凭れて大きく息を吐く一郎の唇から喉の辺りを見ていると、癒されるというより興奮してくる。しかし恥ずかしくてじっとしていると、一郎の方から手を伸してくれた。
「おいで」
素直に近付いて来た三郎を、一郎は膝の上に抱き上げた。
「三郎、随分大きくなったな」
「オヤジみたいなこと言わないでよ」
そう言われて、一郎は椿のことを思い出し、父親について三郎に話すべきか考えた。
「どうしたの?」
自分を見つめたままじっとしている一郎に、三郎は首を傾げた。
「いや、なんでもない」
話すとしても今ではない。今話したら三郎は益々眠れなくなってしまう。誤魔化すようにキスしようとすると、三郎は顔をそむけた。
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