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「次郎のこと考えてたんでしょ」
そう言うと三郎は立ち上がった。
「やっぱり悪いよね。次郎は好きでもない龍人の相手してるのに……」
「待て」
一郎は、風呂を出た三郎を追いかけて腕を掴んだ。
「さっき考えていたのは次郎のことじゃない。三郎、おまえのことだ」
「え?」
今度はキスを成功させた一郎は、三郎の腕を引いて寝室に入るとベッドに押し倒した。
「ダメだよ、ダメ……」
自分が一郎に抱かれるのは次郎に申し訳ない。そう思って肩を押し返したが、力が入らない。一郎は肩に触れた三郎の両手を掴み指を絡めてベッドに押しつけると瞳を覗き込んで尋ねた。
「そんなに次郎が好きか? 目の前に俺がいても、おまえの頭の中は次郎でいっぱいなのか?」
「それは……」
三郎は一瞬戸惑い一郎から目を逸らしたが、意を決して目を合わせると正直に告白した。
「一郎への気持ちと次郎への気持ちはなんていうか……方向性が違うんだ。だから思うだけなら矛盾しないんだけど、実際行動に移すとダメみたいだ。一郎には抱かれたいけど、それで次郎を傷付けるのは嫌なんだ。俺、どうしたらいいの?」
瞳を潤ませ熱い息と共に吐き出された三郎の言葉に、一郎は微笑んだ。
「男としては次郎が好きで、女としては俺が好きってことか。ならば女になりきればいい」
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