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もう駄目だと目を閉じた時、キンと高い音が響いた。
三郎が目を開けると、剣は遥か遠くに落ちていた。一郎の刀に打ち落とされたのだ。
「下がれ」
そう言われても足が動かない。呆然と見詰める三郎の目の前で一郎は大きく刀を振るった。すると刀から三日月のような光が飛び出した。龍はそれを避けた瞬間に、動きを見越して既に放たれていた第2の光の刀で喉元を斬られ、消えた。
苦戦した龍を一瞬で倒されて、三郎は呆然としていた。一郎は彼に構わず、五郎に向かって軽く顎を振った。
「あ、はい」
五郎が何か唱えると、三郎の剣が落ちた場所まで地面の色が変わり、場外となった。
一郎は何も言わず、そのまま去って行った。その後ろ姿を見送ると、四郎は三郎の剣を取りに行き、立ち尽くしたままの三郎に差し出した。
「剣を投げるて発想は悪なかったで」
四郎は優しく声を掛けたが、三郎は一層歯を食いしばって黙っていた。
悪くない発想? とんでもない。剣を投げるなんて、どうしようもない所まで追い詰められるまで、やってはならない行為だ。外れれば命はない。
三郎は四郎から奪い取るように剣を手にすると場内に向かって駆け出した。
もう一度戦う
戦って今度こそ倒す
しかし三郎の体は、見えない壁に弾き返された。
「え? どうして?」
「今日はもう終わりだ。頭冷やして眠れ」
「こんなんじゃ眠れないよ。なあ、さっきあいつが出した――」
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