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するとそこにノックしようとしていた四郎が立っていた。
「すみません、資料室片付けてたらこんなん――」
一郎は、早口でまくし立てる四郎の唇を指で塞ぎながら部屋の外に出た。
「今寝かしつけた所だ。おまえの部屋で話そう」
自分の部屋に戻ると、四郎は再び早口で話し始めた。
「一度片付けて資料室出た後、風呂に入って五郎ちゃんと話したら三郎が資料乱暴に扱ってた言うんで、寝る前にもう一度確認に行ったんです。そしたらこれが棚の下に転がってて、一応開いて確認したら銀の龍の餌場について書かれてました」
四郎はその記述がある場所を開いて一郎に渡した。
「ハッカのような匂いがする草原て。あの光のドームから微かにミント系の匂いしてましたよね?」
「そうか。やはりあれは王の匂いか」
「えっ、王って龍王ですか?」
「ああ。ミント系の香りに混じって、美味そうな匂いがしてこなかったか?」
「そういえば、なんや腹が減ってるような気にさせるええ匂いが――」
「それだ。龍王の匂い、つまり龍人の中性にとって最も美味い食い物の匂いだ」
「ええーっ!」
叫んだ後絶句してしまった四郎に、一郎は資料を突き返した。
「王自ら人間界を滅ぼしに来るとはな。しかしそれが最も早いのだろう。ここを読んだか?」
「いえ餌場のところ読んで慌てて――」
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