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「それは心外だな。俺はおまえの為に命を張ってみせただろう? 三郎も何度か命がけで守った。リーダーの責務だけで動いていると思っていたのか?」
四郎は一郎が青い洞窟で龍から逃がしてくれたことを思い出した。忘れたわけではなかったが感謝の気持ちが薄れていたことを反省した四郎は、慌てて起き上がり土下座した。
「失礼しました、すみませんでした!」
「わかればいい。おまえはすぐに謝るな」
「え、あ、すいません――あ」
また謝ってしまった四郎に微笑みかけると一郎は着物を手に立ち上がった。
「次郎にはまだ命を懸けていない。そろそろ命がけで助けに行ってやらないといけないな。とりあえずゆっくり休め」
一郎は自室に戻るつもりで四郎の部屋を出たが、少し離れた場所に五郎が立っていることに気づき、彼に近付いた。
「どうした?」
五郎は黙って自分の部屋の戸を開き、中に入るよう促した。一郎が黙って従うと、五郎は更に部屋の奥の壁にしか見えない場所を開いた。2人とも隠し部屋に入って戸を閉めると、五郎はようやく口を開いた。
「与えてばかりではお腹が空きませんか?」
「俺なら――」
大丈夫だと答えようとすると、五郎が赤い錠剤を載せた手を突き出してきた。
「この部屋にも隠し戸棚があるのではないかと調べた所、発見した戸棚の中にこの錠剤が入ったビンがありました。治療する体力がない時に一錠だけ飲め、戦士には飲ませるなとメモが添えられています。もしかしたら龍の肉を加工したものではないでしょうか?」
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