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一郎は赤い錠剤を手に取った。艶やかな丸い粒は何かでコーティングされているようだ。
「ナイフはあるか?」
「はい」
一郎は錠剤のコーティングをナイフでそぎ落とした。中身も赤かったが柔らかく瑞々しい。鼻を近づけると何度か嗅いだことのある匂いがした。
「赤い龍の肉だな。そのビンは?」
「これです」
五郎からビンを受け取った一郎は、蓋を開けて掌の上に5、6粒錠剤を出すと一気に口の中に放り込んだ。
「一郎様!?」
「おまえも食え」
一郎は、錠剤をかみ砕きながら五郎の手を掴みその掌に錠剤を出した。一郎の口から赤い龍の肉の匂いがする。とても美味そうな匂いだ。しかし一郎の身に何か悪い変化が起こったら即対応出来るよう待機しているべきだと五郎は錠剤を口にしなかった。
「食わないなら俺が全部食うぞ」
それはいくらなんでも危険だ。五郎は慌てて一郎からビンを取り上げようとしたが、一郎はひらりと身をかわして中身を全部自分の口の中に入れてしまった。
「無茶です、吐き出して下さい」
しかし一郎はニヤニヤしながら錠剤を噛み続けている。しばらくすると瞳孔が開き目の焦点が合わなくなってきた。
「ハハ、やはり赤はヤバイな」
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