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「あいつやない。一郎さんや」
四郎はそれまでより強い口調で三郎を窘めた。
「まだわからないのか。おまえは一郎さんの足元にも及ばない。指導して貰う身だ。礼儀をわきまえろ」
三郎が返事をせずただ項垂れると、四郎はため息をついて三郎の頭を小突いた。
「ホンマしゃーないガキやな。俺に標準語使わすな。五郎ちゃん、俺の部屋何処?」
「ああ、こっちだ。三郎、おまえも来い」
三郎はやはり返事をしなかったが、2人の後について来た。
訓練場を出て廊下を歩いて中庭を越えた所まで戻ると、五郎は部屋の前で立ち止まって2人に告げた。
「こっちが四郎、三郎はその隣だ。布団も着替えも、必要なものは全て揃っている」
「風呂は?」
「ああ……そうだな。じゃあ武器を置いて着替えを取って来い」
三郎と四郎はそれぞれ部屋に入った。
どちらの部屋も六畳の質素な和室だ。武器を置くための床の間のようなスペースと押入れがあり、家具は箪笥と小さな机と座布団だけでテレビもパソコンもないし、ポケットに入ったままの携帯も当然圏外だ。
着替えを探して箪笥を開けると、入っていたのは全て着物だった。そして下着は褌しかない。
「マジかよ。着替え持って来れば良かった」
三郎は、ため息をつきながら浴衣と褌を手に取ると、部屋を出た。
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