第24章 堕ちてきた天使

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第24章 堕ちてきた天使

長の会議を終えて国に戻った黄龍は、部下達と話し合い人間界に送り込む生物を決めて増殖を開始した。そして作業が順調に進み始めたのを確認すると、部下に仕事を任せて自室に引き上げ、携帯端末を取り出して発信履歴を開いた。そこには青二の名前が並んでいるが、一度も繋がっていない。 捕虜にしていた戦士のリーダーが逃げ出したと気づいて国に戻った時、同じ部屋で治療を受けていたはずの青二はいなかった。捕虜が自力で手足の拘束を外したとは考え難く、青二が逃がしたに違いないことはすぐにわかったが、探し出して問い詰める前に龍王に報告することにした。詳細を知ってしまった後では青二のことを龍王に隠すのは難しいからだ。そして報告を終えて城に戻ると隠れていた青二が姿を現した。 「龍王様に怒られた? ごめんね」 「やはりおまえが逃がしたのか」 「彼を帰したら、牡丹の安否を確認出来るかと思って。でも本当に最初からそのつもりでここに来た訳じゃないんだ。なんていうかその……はずみで」 軽い悪戯をした程度の謝罪だったが、黄龍もまだそれ程深刻な事態だとは考えていなかった。 「わかったよ。確認してみよう。元気だったら、その子も一緒にここへ連れ戻せばいいのだろう?」 「うん。ありがとう」 首輪の感度を上げて一郎の様子をうかがう前に、黄龍は青二を連れて柔らかな床と壁に囲まれた何もない部屋に移動した。首輪をはめた相手との共感を強めると、思わぬ方向に移動してしまったり倒れたりする危険があるからだ。 黄龍は、柔らかな床に静かに腰を下ろすと、首輪の感度を徐々に上げていった。すると悩ましい息遣いが聞こえてきた。唇が、暖かくて柔らかい弾力のあるものに触れている。黄龍はニヤリと笑って青二に告げた。 「これから食事のようだ」 「貴人同士で?」
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