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しかし椿の息子は帰ることを拒んだ。すると桜は彼に自分につけられた首輪を外してくれと頼んだ。黄龍は首輪にパワーを送りそれを阻止したが、剣の力は想像以上だった。
「まずい、首輪に亀裂が入ったかもしれない」
「えっどうして?」
「武器で首輪を外そうと――あっ」
可愛い舌が桜の首を舐めた。首輪を外そうとした際についた傷口の痛みが別のものに変わっていく。すると冷静だった桜が欲情し、黄龍の支配を拒む力が弱まり始めた。この状態なら、遠く離れた結界の中にいても桜の体の主導権を握れるかもしれない。
「桜に乗り込む。何かあったら引き戻してくれ」
青二にそう告げると、黄龍は座ったまま動かなくなった。桜に意識を集中させ、彼の体を乗っ取っることに成功したのだ。
椿の息子を人間界に帰すわけにはいかない。彼の体を龍人化する為に、黄龍は、その体の奥深くに桜の体液を流し込んだ。椿の息子の体内は心地よくもう一度それを繰り返そうとしたが、体の欲求が落ち着いて冷静さを取り戻した桜に主導権を奪還されてしまった。
そして桜は再び自分の意志で椿の息子を抱いたが、黄龍は主導権を失っても桜の中に留まっていた。桜の目を通して見る椿の息子は、実に可愛らしい。自分の体で抱いてみたいと思っていると、桜の心の声が聞こえてきた。
『三郎は俺のものだ。おまえには渡さない』
生意気な。黄龍は桜の首輪をきつく締めようとしたが、それを察知した桜は首輪を両手で掴んだ。手から足先まで電流のような刺激が走り、黄龍はたまらず首輪の感度を下げた。普通なら反射的に手を離す、耐えても数秒が限界の激しい熱と痛み。しかし桜は力一杯首輪を掴んで離さない。
黄龍は首輪にパワーを送り続けたが、感度を最低まで下げても襲ってくる猛烈な痛みで、意識が朦朧としてきた。遠くから誰かが名前を呼んでいる。
黄龍、黄龍――
「黄龍!」
自分の体に意識が戻り、目が覚めた。まだ幻の痛みが手に残っているが、桜との繋がりは断たれたようだ。
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