第24章 堕ちてきた天使

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「平気だよ。あのね、小鳥の雛を見つけたの。凄く可愛いんだよ。まだママ、餌しか言えないけど」 山吹は、耳につけた翻訳機を揺らしながら答えた。 「じゃあ後で巣の回りに結界を張ってあげるよ。それから……ちょっと急用があるんだ。食事は少し待ってくれないかな」 「えー」 山吹は唇を尖らせて青二を睨んだが、青二はお先にどうぞとは言わなかった。 「ごめんね。我慢出来なかったら誰かに食べさせて貰っていいよ」 そう言うと、黄龍は青二を連れて別の部屋へ行ってしまった。 「じゃあまた遊んでくる」 黄龍の耳には届かないだろうと思いつつ山吹はそう叫んだが、本当に外に出ようとしたら転送ゲートが閉じられていた。 「ここからじゃなくても出られるもんね」 山吹は部屋を出て階段を駆け下りた。転送紋を使わなくても外に出ることは可能だ。地上付近に体の大きな黄龍は通り抜けることなど考えもしないだろう明かり取り用の窓がある。そこなら見張りもいないはずだ。辿り着いてみるとやはり誰もいなかったが、山吹はもう一度辺りを確認してから静かに窓を開いて外に出た。しかし外と言ってもそこはまだ結界に守られた城の敷地内だ。本当に外に出る為の門は恐らく封鎖されているだろう。山吹は城内の龍人達に見つからないよう草木の影に隠れると、門の外に沢山いるはずのサソリに話し掛けた。 「ねえ、誰か穴掘ってくれない?」 暫く待つと、目の前にサソリが顔を出した。 「それじゃ通れないよ。もう少し大きくして」
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