第24章 堕ちてきた天使

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「でも貴人に間違いはないのですね。それで……あなたは黄龍様の奥様でいらっしゃいますか?」 「そうだよ。黄龍の妻、山吹。僕を知らないって、あなた達何者? 何処から来たの? 僕今、聞いたこともない言葉しゃべってるんだけど」 そう言うと、山吹はピンクオレンジの舌を出して翻訳機を見せた。 「えっ人間の言葉習ったんやなくて?」 翻訳機は驚異的な性能だが、使いこなすのは意外と難しい。自分にあった言葉遣いで相手と同じ速さで流暢に話すにはかなりの技術が必用だと知っている四郎が驚いて叫ぶと、外の世界について一切知らされていない山吹は首を傾げた。 「ニンゲン? 何それ」 目を見開いて可愛らしい声で問いかける山吹はまだ幼い少年に見えるが、貴人の年齢は見た目ではわからない。驚異的な嗅覚を持ち、翻訳機があるとはいえ聞いたこともない言葉を流暢に話すことが出来る黄龍の妻。接し方を間違えればやっかいなことになると考えた一郎は、他の戦士達が余計なことを話さないよう目で制し、何と答えようか考えたが、黄龍の妻は答えを待たずに背を向けて壁と向き合った。 「僕、この壁を越えたんだよね。ねえここってまだ黄龍の国?」 「いいえ。その壁が境界です。ここは世界の狭間にあるもう一つの黄色い砂漠です」 「狭間ってことは別の世界があるの? 人間ってその世界の住人のこと?」 瞬時に問い返されて一郎は戸惑ったが、好奇心旺盛な山吹の嬉しそうな表情を見て答えた。 「はい。しかしこのままでは龍王様に消されてしまいます」 「どうして?」 「我々にもよくわかりません。攻撃を止めて欲しいのですが、力に差がありすぎて話し合いにも応じて頂けません」
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