第24章 堕ちてきた天使

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「なんだ全部金龍が仕組んだことか。もう何も考える必用ないな。よし、始めよう。まずこれを飲んで」 一郎は、濃い緑色の液体が入ったグラスを受け取り一口飲んだ。草と肉を混ぜたような奇妙な味がする。 「そう、全部飲み干して。口から内蔵までしっかり膜で覆う感じでゆっくりね。最初に食べるのは黒い龍の肉だ。ちゃんと保護しておかないと消化する前に体が溶けるよ」 そう言うと黄二は右腕に力を込めた。たちまち腕に黄色と白の龍が絡みつき五本の指先に長い爪が伸びた。黄二がその爪で黒い肉をえぐり取ると、それまで透明な袋でぴったりと覆われていた肉が匂いを放ち始めた。あの沼の匂いだ。食べ物が発しているとは思えない臭気に、一郎は顔をゆがめた。 「噛まなくていいように加工した肉だ。喉に落とすから、まっすぐ上を向いてしっかり大きく口を開けて」 喉の奥に放り込まれるだけなら味は感じなくて済むだろう。一郎は少しホッとして言われた通り口を開いた。 「行くよ。危ないから動かないでね」 黄二の爪が迫ってくる。深く息を吸って目を閉じた一郎の喉の奥に小さな塊が続けて数個落とされた。一郎はそれを反射的に呑み込んだ。 「どんなに苦しくなっても吐き出しちゃだめだからね」 そう言われても何も問題ないと思った直後、一郎は強烈な吐き気に襲われた。更に体内に火の玉を投げ込まれたような熱と痛みも襲ってきた。 「吐かなければ暴れていいから、とにかく耐えてね」 床に倒れて転げ回っても痛みは変わらないが、じっとしているより気が紛れる。本当は悲鳴を上げたいが、口を開いたら吐きそうなので唇を噛んで耐えた。そうしているうちに吐き気と痛みは徐々に治まってきた。
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