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「いいえ」
四郎に微笑みかけた後、次郎は三郎に目を向けた。三郎は、次郎と目が合うと視線を逸らして一言だけ挨拶した。
「――よろしく」
3人が落とし湯で体を洗い始めると、次郎は湯船から出た。
「お先に失礼します」
そう言って次郎が脱衣所に戻るまで、四郎はさりげなく彼を観賞した。そして脱衣所から彼が去る気配を確認してから五郎に尋ねた。
「なあ、次郎ちゃんて戦士の証どこについとるの?」
「さあ。俺も見た事がない」
「三郎は? さっき見えたか?」
見えるも何も、恥ずかしくてよく見なかった。軽く首を振った三郎は、母の言葉を思い出した。母は、父の腕には戦士の証はなかったと言った。けれど証は、母も気付かないような場所に刻まれていたのかもしれない。
父はやはり戦士だったのだろうか。武器を持たずに龍と戦い、死んだのだろうか。
「ねえ、印の場所とか大きさって戦士によって違うの?」
「そうや。俺とおまえも違うやろ。ええな、次郎ちゃん目立たんで」
戦士の証の話をしている2人に向かって、今度は五郎が尋ねた。
「次郎を見た感想はそれだけか?」
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