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「落ち着いてきた?」
「はい。胃はまだ焼けるように熱いですが」
「消化機能が働いている証拠だ。休むと再び活性化するのに時間がかかるからもう少し頑張ろう」
黄二は再び黒い龍の肉をえぐり取った。
「また黒い龍の肉ですか?」
「まず最初にどれか一色で体の基礎を作る。見た所君が一番吸収しやすいのは黒だ。それに黒は比較的安全な肉なんだ。一気に食べられないから許容量を超えてしまう心配がない。事故が起きるのは赤とか白とか口当たりのいい肉なんだよ」
「そういうことですか。わかりました」
頭で理解しても体が拒否する。黒い肉を手にした黄二が近付いてくると、一郎は意に反して後ずさりそうになる体を止めようと床に押しつけた手に力を込めて目を閉じ、口を開いた。
しかし、その口に触れたのは爪ではなく指だった。
「唇が切れてる。溶けるといけないから、治しておこう」
黄二は一郎の顎を掴んで唇を舐め始めた。最初に舌が触れた瞬間、一郎は肩をピクンと振るわせたが、その後はまるで自分で自分の唇を舐めているかのようだった。黄二は、丁寧に、しかし淡々と舐めて治療を終えた。
「これで大丈夫だと思うが……何か引っかかっている顔をしてるね。まだ何処か異常があるかい?」
「ああ、いえ。不思議な感触だったので……」
「え? ああ、僕の舌? 体温と動きは君に同調させたはずだけど、違和感があった?」
「いえ、逆です。同調ですか。そんなことが出来るんですね」
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