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「俺は研究者だから他の色の肉も食べるよ。調理して食べることもあるし、多少なら女達が食べる果実も口にする。でも爪で直接龍の肉を取り出して食べるのが一般的だ。金龍は、龍人の食事はまるで水を飲むようだと言っていた」
黄二は一郎の目を見て話していたが、その視線はまるで自分を通り抜けて別の何かを見ているようだと感じながら、一郎は黄二に問い掛けた。
「それは一体いつの話ですか?」
「さあいつだったかな。金龍の世だから200年以上前だよ」
「つまりあなたは200歳を超えているのですね」
「もっとだよ。こう見えてとんでもないお爺ちゃんだ」
そう言ってにっこり笑う黄二は、20歳前後の青年にしか見えない。
「龍人界に捕らえれている間に何人もの男を相手にしましたが、あなたは彼等とは少し違う。失礼ですが、顔立ちも仕草もとても可愛らしい」
そう言いながら、一郎は黄二に近付いた。龍を食べると貴人を抱きたくなるのは男の性だ。黄二は貴人ではないが、貴人のように美しい。触れそうな距離まで接近してきた一郎の唇を、黄二は指で制した。
「悪いけど一々相手をしてたらこっちが持たないし、君も出来るだけ体液を放出しない方がいい。赤い肉を食べる時まで気持ちのいいキスはお預けだ。やっぱり少し休もう。また後でね」
黄二は素早く転送紋を描き城内の別の部屋に移動した。やはり戦士には知らされていない部屋だが、訓練場と似ている。黄二が床の境目にある金のプレートの前に跪き、そのプレートに口付けると、部屋の奥からゆっくりと人影が現れた。
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