224人が本棚に入れています
本棚に追加
/962ページ
「そうか? 紫も渋くてカッコイイぜ?」
それはそうだろうと思ったが、黄二は笑って首を振った。
「戦士に俺のこと話したか?」
「時間がないから止めた。あなたの性処理も請け負う相談相手だったって自己紹介したら笑われたよ」
「愛人って言うの、照れたのか?」
「愛人は青二でしょ」
「なんだおまえ、妬いてたのか? あいつはあいつ、おまえはおまえ。どっちも可愛い愛人だ。いや、青二は正式な愛人じゃねーぞ。あいつはガキだったから契約してねー」
「俺だって契約なんてした覚えないけど?」
「しただろ。出会った日のこと忘れたか?」
遙か昔のことだが、忘れるはずがない。混合色の男達が集まる店で飲んでいたら、金龍がやって来た。龍王の突然の訪問にざわめく店内を黄二に向かってまっすぐ歩いて来た金龍は、黄二の肩を掴んで囁いた。
『おまえ、可愛いな。俺の愛人になれ』
答える間もなくキスされて、気がついた時にはもうベッドの上だった。
「あれは契約じゃなくて命令でしょ」
「どっちでもいいだろ。おまえは俺の愛人だ。俺が言うんだから間違いない。俺はおまえを愛していたし、おまえも俺を愛してた。そうだろ?」
でもどんなに愛しても男は妻になれない。黄二は、もしも自分が貴人だったら歴史が変わっただろうかとふと思ったが、すぐに否定した。自分は所詮愛人だ。それ以上には決してなれないと。
最初のコメントを投稿しよう!