第24章 堕ちてきた天使

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「青二には金の花園をプレゼントしたらしいね」 「ああ。そっちの方が良かったか?」 黄二の目の前にいる金龍は、本物ではなく幻だ。金龍が銀龍に王位を譲ると決意した直後に黄二の為に作った。もう貴方に会えないなんて寂しい。そう言って流した涙に答えてくれたのだが、ここで金龍の幻に会うのはその時以来だ。誰にも邪魔されない場所で金龍の幻になんて会ってしまったら現実の世界に帰れなくなりそうで怖かった。黄二は、その本物そっくりの幻の頬に手を伸した。 「金龍の頬ってこんな感触だったっけ?」 「感じられないのは俺の設計ミスじゃねー。おまえが俺を忘れてるせいだ。もっとちゃんと思い出せ」 幻の手が、黄二の頬に触れた。大きくて温かい。かつて自分に触れた本物の感触と同じ気がするし、違う気もする。それが正しい記憶かどうか確かめることは出来ない。黄二は、所詮自分の記憶の残像でしかない金龍の頬から手を離し、金龍の手からも逃れようとしたが、その前にしっかり顎を掴まれた。 「どうやら俺は死んだみたいだな。しかもおまえが知ってるってことは――寿命じゃねーな」 「ああ。黄龍から聞いたんだ。銀龍があなたを粛正したって」 「そうか。菖蒲と俺の子は?」 「その菖蒲って人があなたの妻なら、後を追って逝った。あなたの子は青二が育ててる。どっちも人から聞いた話だけどね」 答えを聞いた金龍は黄二から手を離すと、ゆっくり頷き微笑んだ。その顔を見て黄二は気付いた。 「そうか、そういうことか……あなたは……」
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