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「何を今更驚いている。何度も言っただろ。俺はもう妻が死ぬのを見たくないって。産後の肥立ちが悪くてな」
「妻が死にそうだったから、その前に自分を殺して貰ったんだね。銀龍は何もかもわかった上であなたを……?」
「さあ、どうだろうな。使命感でも哀れみでも恨みでもいい。殺してくれたなら感謝するさ。椿は助けて大事にしてくれてるみたいだしな」
「あなたやっぱり椿にも手を出してたの?」
「いや、俺は本当に嫌がる相手は抱かない主義だ」
金龍に指先でスッと唇を撫でられた黄二は、眉を顰めて尋ねた。
「じゃあなんで彼の花を知ってるの? 彼が椿と名乗るようになったのは銀龍の城に入ってからだと聞いてるけど?」
すると金龍はニヤリと笑って答えた。
「俺の城の中で誰が何をしてるかは全部見えちまうからな。おまえ、貴人達の茶会を覗いたことねーのか?」
茶会とは、体液に特別な栄養がなく食事にはならないが、男とはまた違った楽しみを味わえるので多くの貴人が行う貴人同士の交わりのことだ。
「そうか。全部見えるなんて辛すぎると思ってたけど、いい思いもしてたんだ」
「ああ。じゃなきゃ王様なんてやってられねー」
「結局嫌になって逃げたくせに。ねえ、俺が今こうして話していることってあなたの記憶に上書きされるの?」
「ああ」
「じゃあ……あなたが死んでから今までの話をするよ」
「ああ。聞かせてくれ」
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