第25章 やつれた男

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三郎は四郎を振り払って城を出るとドームに向かって走り出した。そして辿り着くと、中にいると思われる龍人に向かって叫んだ。 「戦いに来たんじゃない、中に入れてくれ」 返事はなかったが、三郎は身につけていた剣を置き、当たって砕ける覚悟でドームに突っ込んだ。すると何の抵抗もなくすっと光の壁の中に入ることが出来た。しかしいくら走っても壁を抜けない。ずっと光の中だ。それでも走り続けていると、何かが動く気配を感じた。耳を澄まし目を凝らす。すると一様に見えていた光に濃淡があることに気づいた。わずかに色も違う。 ここはもう、ドームの中だ そう気づいた三郎が濃い銀色の塊を凝視していると、輪郭線が見えてきた。 「銀色の龍!?」 反射的に剣を構えようとして置いて入ったことを思い出した三郎は、ただ立ち止まり龍を仰いだ。すると龍の背後から一際まぶしい銀色の光の塊が迫ってきた。 攻撃かと一瞬身構えたが、違う。 意味は全くわからないが、そのまぶしい光の塊は声を発している。 つまりあれは龍人だ。 けれどいくら目をこらしても龍のように形が見えてこないと思っていると、突然光が弱くなった。 現れたのは波打つ銀髪と紫の瞳を持つ龍人だった。 龍人は、三郎と目を合わせて何か話しかけようとしたが、次の瞬間、胸を押さえて倒れてしまった。 「えっ?」 三郎が戸惑いつつ近づこうとすると、頭上から何か大きなものが降ってきた。 赤い龍人だ。彼は何か叫んで三郎につかみかかろうとしたが、銀の龍人に呼び止められると彼の方に行ってしまった。 「三郎!」
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