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赤い龍人が銀の龍人を抱き起こす様子を呆然と眺めていた三郎は、追いかけてきた四郎と五郎に声をかけられて我に返った。
「あの龍人、おまえがやったんか?」
「俺は何も――四郎、あいつら何話してるんだ?」
「私は大丈夫だ……それより早く百合を……百合が……えっ?」
三郎に頼まれた四郎は、龍人達の会話に耳を澄ませて通訳を始めたが、何かに驚いて黙ってしまった。
「おいどうした? 百合ってもしかして――」
貴人は肌に咲く花の名で呼ばれるらしいと気づいていた五郎の頭に次郎の顔が浮かんだ。そして三郎もそれを察した。
「次郎……次郎がどうかしたのか? おい、四郎!」
しかし四郎は黙ったままだった。
そこへ赤い龍が降りてきた。赤い龍人は、銀の龍人を抱えて立ち上がると、ひらりと龍に飛び乗った。
「ああっ、行っちゃう!」
三郎は赤い龍に駆け寄った。
「やめろ、戻れ三郎!」
三郎の頭の中は次郎のことでいっぱいで、四郎と五郎の制止など耳に入らなかった。三郎が龍人に続いて赤い龍に這い上がると、龍は飛び立った。
「三郎――うわっ!」
なすすべなく空を見上げていた四郎と五郎は、後に残った銀の龍が軽く首を振っただけで光のドームの外にはじき出されてしまった。
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