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代わりに三郎の相手をすることになった使用人は、翻訳装置と言語学習装置を持ってきて指示された通り三郎に言葉を教えようとしたが、三郎は反発した。
「なんで俺がお前らの言葉覚えなきゃなんないんだよ。お前ら俺の言葉わかるんだろ?」
「翻訳機は誰もが常に持っていて使えるというわけではございません。お嬢様が常に身につけるのであれば覚えなくても支障はないでしょうが、覚えてしまわれた方がよろしいと存じます」
「嫌だ、めんどくせーよ。そのお嬢様ってやつに身につけさせて通訳頼むわ」
話が噛み合わず、使用人は一瞬戸惑ったが、すぐに誤解に気づいた。
「お嬢様と申し上げたのは、あなた様のことです。お名前を存じ上げな――」
「はあ!? 俺がお嬢様だと?」
三郎は使用人に掴みかかりそうになったが、失礼なのは翻訳機だと怒りを収めた。それと同時に翻訳機の限界を知り、龍王と交渉する為には言葉を覚えた方がいいだろうと考え直した。けれど龍人と一対一で勉強なんて嫌だ。
「そいつは誤訳だから直すようにメーカーに言っとけ。わかった。自分で覚えるから貸して」
三郎は翻訳機と言語学習装置を受け取ると、使用人に出て行ってもらった。
「ここか?」
それらしきボタンを押すと言語学習装置が起動し、音声が流れ始めた。しかし龍人語なので何を言っているのかさっぱりわからない。
「あ、そっか」
三郎は翻訳機を耳につけてみた。すると意味のわかる言葉が聞こえてきた。
『学習方法を選んで下さい』
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