第25章 やつれた男

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三郎はもう一度部屋を見回してみたが、部屋には収納家具らしきものはない。あの四角いボタンが並んでいるだけだ。 「順番に押してみるか」 三郎は、一番上の端から順番にボタンを押し始めた。どれを押しても試合の映像が浮かび上がる。 「やっぱり全部これか」 しかし、そう呟きながら押したボタンは違った。触れると消えて、隠れていたくぼみが現れた。そこには赤い小さな輪があった。 「指輪?」 指先で触れてみて問題がないことを確かめると、三郎はそれを手に取ってみた。 「単なる飾りかな。それとも……」 さっき投げ出した翻訳機はイヤリングの形だった。もしかしたらこの指輪も何かの道具かもしれない。そう思った三郎は、思い切って指にはめてみた。痛みや熱といった特に変わった感覚はないし、外れなくなることもなかったが、三郎の体も部屋も何も変わらない。 「うーん、他の何かと組み合わせて使うのかもしれないな」 三郎は指輪をつけたまま引き続き他のボタンを押してみた。しかし映像へのリンクではないボタンは他にはなかった。 「だめか」 一番左端の最後のボタンを押した後、三郎はため息をついて横の壁に手をついた。すると手はそのまま壁の中に入ってしまった。 「うわっ!」 慌てて引っ込めると手は壁から出てほっとしたが、三郎は不思議に思った。
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