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三郎はもう一度部屋を見回してみたが、部屋には収納家具らしきものはない。あの四角いボタンが並んでいるだけだ。
「順番に押してみるか」
三郎は、一番上の端から順番にボタンを押し始めた。どれを押しても試合の映像が浮かび上がる。
「やっぱり全部これか」
しかし、そう呟きながら押したボタンは違った。触れると消えて、隠れていたくぼみが現れた。そこには赤い小さな輪があった。
「指輪?」
指先で触れてみて問題がないことを確かめると、三郎はそれを手に取ってみた。
「単なる飾りかな。それとも……」
さっき投げ出した翻訳機はイヤリングの形だった。もしかしたらこの指輪も何かの道具かもしれない。そう思った三郎は、思い切って指にはめてみた。痛みや熱といった特に変わった感覚はないし、外れなくなることもなかったが、三郎の体も部屋も何も変わらない。
「うーん、他の何かと組み合わせて使うのかもしれないな」
三郎は指輪をつけたまま引き続き他のボタンを押してみた。しかし映像へのリンクではないボタンは他にはなかった。
「だめか」
一番左端の最後のボタンを押した後、三郎はため息をついて横の壁に手をついた。すると手はそのまま壁の中に入ってしまった。
「うわっ!」
慌てて引っ込めると手は壁から出てほっとしたが、三郎は不思議に思った。
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