224人が本棚に入れています
本棚に追加
/962ページ
「え、なんで? さっき調べた時には普通に固かったのに……」
どこか開かないかと両手で触って探した時には確かに固い壁だった。三郎はもう一度ゆっくり手を伸ばしてみた。やはり手はなんの抵抗もなく壁の中に入っていく。
「あっ、この指輪の力か? すげー、このまま外に……あれ?」
手首まで入ったところで急に圧力を感じた。どうやら入るのはそこまでのようだ。別の場所で試しても同じだった。
「なんだこれ。ここまで手が入ることに意味があるのか?」
三郎はしばらく壁を見つめて考え込んだ。そしてひらめいた。
「もしかして、収納?」
中は全く見えない。どうにかすれば見えるのかもしれないし、どこかに場所を書き記した図でもあるのかもしれないが、そんなものを探すより手を突っ込んでみた方が早い。三郎はあちこちに手を突っ込んでみた。
「剣、剣……」
素手では絶対龍人の男にはかなわない。剣があってもかなわないかもしれないが、何もないよりずっと心強い。たとえ戦士の剣ではなくても。
とにかく剣が欲しい。そう念じながら手を突っ込み続けていると、突然掌に棒状のものが飛び込んできた。つかんで引き抜くと、それはあの王の剣そっくりの剣だった。
「あった!」
しかし喜んだ直後、三郎は不安になった。手にした剣は、王の剣より一回り小さくて軽い。それに刃先も鋭利ではないようだ。
「そりゃそうだよな」
最初のコメントを投稿しよう!