224人が本棚に入れています
本棚に追加
/962ページ
ブロンズのような肌、赤く光る黒髪、赤い虹彩の奥で輝く黒い瞳。
その黒い瞳で三郎を見つめると、さらに長く鋭くなった赤い爪で、赤二は自分の腕を切り裂いた。そして芳醇な香りを放つ深い赤の血が滴り落ちる腕を、三郎に突き出した。
「な……?」
赤二は戸惑う三郎の頭を掴むとその腕に三郎の口を押し当てた。三郎は反射的にその血を吸ったが、すぐに傷口が閉じて流血は止まってしまった。すると赤二は再び腕を切り裂き、噛む仕草をして三郎に押し当てた。唇を割り歯に当たるように腕を押し込んでくる。傷がふさがらないように噛めということらしい。人の肉を噛むことには抵抗があったが、逆らう力はない。それに彼は明らかに自分を助けようとしてくれている。三郎は素直に従った。
「うっ!」
でもやはり痛いらしい。三郎が歯を立てると、赤二はうめき声を上げて顔をしかめた。しかし噛むのを止めようとすると、赤二は三郎を背後から抱き上げ頭を抱え込んだ。
苦しそうに耳元でささやかれた言葉の意味はわからないが、いいから気にせず噛めと言っているようだ。
(なんでこんなに必死に俺のことを?)
強く抱きしめる赤二の腕に愛を感じた三郎は戸惑ったが、悪い気はしない。むしろ心地良い。
安心した三郎は、目を閉じた。
すると一瞬で、三郎の意識は深い闇の奥へと沈んで行った。
もう浮上することが出来ないほどに深く、深く。
「おい、しっかりしろ、おい!」
噛む力も吸う力もなくなった三郎の顎を掴んで赤二が叫ぶと、赤龍がやってきた。
「兄上、助けて下さい。彼が――彼も死んでしまう!」
赤龍は三郎を抱きかかえた赤二の前で身をかがめたが、三郎のことは一瞥もせず、赤二をじっと見つめて顎を掴んだ。
最初のコメントを投稿しよう!