第25章 やつれた男

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ブロンズのような肌、赤く光る黒髪、赤い虹彩の奥で輝く黒い瞳。 その黒い瞳で三郎を見つめると、さらに長く鋭くなった赤い爪で、赤二は自分の腕を切り裂いた。そして芳醇な香りを放つ深い赤の血が滴り落ちる腕を、三郎に突き出した。 「な……?」 赤二は戸惑う三郎の頭を掴むとその腕に三郎の口を押し当てた。三郎は反射的にその血を吸ったが、すぐに傷口が閉じて流血は止まってしまった。すると赤二は再び腕を切り裂き、噛む仕草をして三郎に押し当てた。唇を割り歯に当たるように腕を押し込んでくる。傷がふさがらないように噛めということらしい。人の肉を噛むことには抵抗があったが、逆らう力はない。それに彼は明らかに自分を助けようとしてくれている。三郎は素直に従った。 「うっ!」 でもやはり痛いらしい。三郎が歯を立てると、赤二はうめき声を上げて顔をしかめた。しかし噛むのを止めようとすると、赤二は三郎を背後から抱き上げ頭を抱え込んだ。 苦しそうに耳元でささやかれた言葉の意味はわからないが、いいから気にせず噛めと言っているようだ。 (なんでこんなに必死に俺のことを?) 強く抱きしめる赤二の腕に愛を感じた三郎は戸惑ったが、悪い気はしない。むしろ心地良い。 安心した三郎は、目を閉じた。 すると一瞬で、三郎の意識は深い闇の奥へと沈んで行った。 もう浮上することが出来ないほどに深く、深く。 「おい、しっかりしろ、おい!」 噛む力も吸う力もなくなった三郎の顎を掴んで赤二が叫ぶと、赤龍がやってきた。 「兄上、助けて下さい。彼が――彼も死んでしまう!」 赤龍は三郎を抱きかかえた赤二の前で身をかがめたが、三郎のことは一瞥もせず、赤二をじっと見つめて顎を掴んだ。
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