第4章 花咲く白い肌

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そして先に風呂から上がった次郎は、一人長い廊下を歩いていた。 城に入って、今日で10日。 一郎の刀と次郎の弓は、三郎の剣や四郎の斧よりも龍の気配に敏感だ。2つの武器は10日前に覚醒し、2人だけで城に入った。2人で手に負えれば他の戦士や救護士が招集されることはない。しかしその後救護士が呼ばれ、今日残りの戦士も全員招集されてしまった。 もう一郎と2人きりではない。 (あの2人か……) 次郎は風呂場で見た三郎と四郎の姿を思い浮かべながらため息をついた。 戦士にはそれぞれ幼い内に決められた許婚がいる。戦士の血を拡散させない為に、他の女性と交わることは禁じられている。それに、ここには女はいない。 けれど戦士は若き男達だ。その欲求を満たす為に互いに愛し合うことは構わないとされている。 ただし溺れない。それが戦士の掟だ。 次郎はその為の教育を受けてきた。特定の相手に執着しないよう、初めての時から複数の男の相手をさせられた。全く知らない相手にも、友人だと思っていた者にも関係を迫られ、受け入れてきた。それで相手を好きになることも、嫌いになることもなかった。 惚れられても、惚れない。体を開く代わりに心を閉ざして次郎は今まで自分を守ってきた。 けれど一郎には、それは通用しなかった。 出会ったその日の内に、あっさりと心も体も奪われてしまった。 抱かれる度好きになる。好きな人に抱かれる喜びに体が震える。 恋。それは次郎にとって初めての経験だった。 でもきっと一郎は違う。抱くのは肉体的な欲求を満たす為、そして主従関係の絆を深める為。その対象になる相手は、もう次郎一人ではない。
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