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第26章 貴人の学校
翌朝、三郎が目覚めると、すぐに従者がやって来た。
「菊様、おはようございます。今日から学校ですね。早速お支度をさせていただいてよろしいでしょうか?」
「あ、はい……」
従者に任せて若葉色のローブと銀の装飾を身につけた三郎は、円柱状の丸い壁に各国へのゲートが並んだ部屋に案内された。
「そのワッペンに描かれた紋章が学校への転送紋ですが、特別な貴人しか通ることは出来ません。先方で職員が待っておりますので、どうぞ銀のゲートにお進みください」
三郎は促されるままに青や白のゲートの前を通過して銀のゲートの前に立った。銀は王の色だということは知っている。つまりこの先は王都だ。以前から行ってみたかった場所のような気がするが独りで行くとなると緊張してしまい、三郎が足を踏み出すのを躊躇っていると、部屋に誰か駆け込んできた。
「待って、一緒に行こう」
それは同じ制服に身を包んだオレンジ色の髪の少年だった。
声を掛けると同時に、彼は三郎の手を取り転送ゲートに入った。着いたのは銀色の門の前だった。色とりどりの花で飾られた広場の奥に白い優美な建物が見える。
「ここが学校?」
「王立特別貴人学校。全国から選ばれた優れた資質を持つ貴人だけが通う学校さ」
「へえ……」
学校というのがどういう場所かは知っているが、具体的な記憶はない三郎は、学校というより城のような建物に特に違和感を覚えることもなく校門をくぐった。
すると建物の中から人が出てきた。緑ではなく茶色のローブに身を包んだ背の高い貴人だ。彼は長い足で颯爽と歩き、瞬時に三郎達の目の前にやってきた。
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