第26章 貴人の学校

7/21
前へ
/962ページ
次へ
「世界が滅びるなんて嫌です」 皆驚いて彼を見たが、三郎は構わず続けた。 「俺は、愛する人や故郷を守りたい。その為だったら――うっ」 「どうしたの? 大丈夫?」 「腕が……」 突然熱くなった腕を押さえて三郎は蹲った。蘭は三郎に駆け寄り腕に触れると、他の生徒達に帰るよう指示して三郎を保健室に連れて行った。三郎が何者であるかについては蘭も保健室の医師も知らされていたので、2人には腕が熱くなった原因はわかっていた。 「先生、俺……」 「大丈夫です。さあ、これを飲みなさい」 医師が鎮静作用のあるお茶を勧めている間に、蘭は保健室を出て、何かあったらすぐに知らせるようにという言いつけ通り赤龍に連絡した。目の前に現れた赤龍の立体映像は、その報告を聞いて眉をしかめた。 『世界が終わるか。菊以外の生徒も動揺したんじゃないか?』 「申し訳ございません」 『まあ、決して大げさな話じゃないし、覚悟させることは必要か。ただ菊には刺激が強すぎたな』 「はい。明日から剣術の稽古を始めますが、菊さんは外しますか?」 『いや。むしろ戦士の記憶を剣術の記憶にすり替えられるかもしれない。かなり思い込みの激しいタイプだからな。人間界を救いたいという情熱をそっくりそのままこの世界の繁栄の為に注いで貰おう。ただし注意は必要だ。くれぐれも事故のないように』 「承知しました」
/962ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加