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「うん、ちょっとそこあけろ」
赤二が場所を空けると、黒龍が赤と黒の龍に飛び乗ってきた。体はそれ程大きくない赤と黒の龍は、巨体に押しつぶされてうめき声をあげた。黒龍はその赤と黒の龍に言い聞かせた。
「おいおまえ、勝手に飛んできて餌を食うのは許さねーぞ。来る時は親と一緒、食うのは俺が許可した時だけだ。わかったか?」
赤と黒の龍が唯一動かすことが出来た瞳をふるわせて承諾の意思を示すと、黒龍は車に戻った。
「よし、俺について来い」
黒龍は赤二と赤と黒の龍を灰色の沼に連れて行った。初めて沼に来た赤と黒の龍は興奮してそのまま沼に飛び込もうとした。
「おい、よせ!」
呼び止めたのは赤二だが、赤と黒の龍は黒龍を見た。
「入っていいぞ。ただし食っていいのは3匹までだ。いいな」
嬉しそうに鳴いて答えた赤と黒の龍が沼に飛び込む寸前に、背中に乗っていた赤二は慌てて飛び降り黒龍に抱き留められた。
「大丈夫か?」
「はい、私は……」
べったりとした灰色にしか見えない沼の中に消えた我が子を心配する赤二の肩を両手で包み、黒龍は囁いた。
「あいつなら大丈夫だ。龍の目で見てみろ」
赤二は目を閉じて龍に意識を集中させた。まず感じたのは美味そうな匂いだ。そして見えてきた景色に赤二は息をのんだ。
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