第26章 貴人の学校

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濁りなくキラキラと輝く水の中を泳ぐ生き物の姿がはっきり見える。黒一色の濃淡しかないモノトーンの世界だが、実に美しい。 「これが、あの沼の中なのですか?」 「ああ。そうらしいな」 赤二は沼に駆け寄り自分の目で覗き込んでみたが、微かに魚影が見える程度で、やはり泥沼にしか見えない。 「黒龍様も、ご自分の目では中は見えないのですか?」 「ああ。龍と一緒に潜らないと迷子になる」 「ここに潜るのですか?」 「気持ちいいぞ。行ってみるか?」 「私の体でもここに入れるのでしょうか?」 「子供があんなに楽しそうにしてるんだから、大丈夫に決まってるだろう。まあでも止めとくか。また何かあったら面倒だ。ウチの連中がおまえをその体にしたこと、まだ赤龍は許してねえからな。自分だって後輩の色変えちまったくせによ」 「そうなんですか?」 「知らねーか? 白龍の瞳が赤いの、あいつのせいだぜ。その経験があるから、やっていい限界がわかるはずだって偉そうに言ってやがったけどよ、白はわかりやすいし今や一国の長になった白龍とナンバー2のおまえじゃ色の強さが違う」 「ええ。彼等の責任じゃありません。私が悪いんです」 赤二が黒く染まったのは、学校を卒業する年だった。黒い生徒の一人に用事があって、彼等が食事をしている部屋に入った時、美味しそうな匂いがした。 その肉いい匂いだねと告げると、臭いと言われることの多い黒い龍の肉を褒められた彼等は喜んで、少し食べてみないかとすすめてきた。
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