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黒龍は、菊が今までいかに残忍な行為を行ってきたか説明した。どれも信じがたい話だったが、黒龍が見たというなら間違いない。
「だが貴人としては最高級らしいな。赤二おまえ、もう食事させたか?」
「いいえ」
「そうか。菊の仲間で逃がしちまった桜っていう貴人がいてな。そいつには各国の長全員が食事を与えた。とんでもねえ吸収力で全身吸い取られるかと思ったぜ。菊はそいつ以上かもしれねえ。俺達を食った桜に抱かれただけで赤い髪になったらしいからな」
「貴人同士で交わって食事になったということですか?」
「調べてみないと断言出来ないが、赤龍はもう調べたんじゃないか? おまえ、本当に何も聞かずに預かったのか?」
「菊はきっといい龍を産むと言われましたが、菊なら私の体液を吸収して赤と黒の龍を産めるという意味だったのですね。でも本当に大丈夫なのでしょうか?」
「さあ、そいつは俺にはわからねーな」
黒龍はそう言いながら袖をまくり上げて腕輪の通信機能をオンにした。
「黒二、こっちに来い」
『はい』
答えが聞こえた数秒後、灰色の沼から龍が顔を出した。赤と黒の龍ではなく全身真っ黒だが、黒い龍にしては細身の龍だ。黒二はその背に乗ってやって来た。その龍と同じく男にしては細くしなやかな体つきだ。黒く輝く長い髪をかき上げて龍から舞い降り、沼の水を振り払いながらこちらに向かって悠然と歩いてくる姿は、自信と気品に満ちている。
「赤と黒の龍の様子はどうだ?」
「すっかり馴染んだようです。遠くへは行けないように結界を張りましたから、好きに泳がせていても大丈夫でしょう」
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