第26章 貴人の学校

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そろそろ三郎が学校から帰ってくる。出迎えて学校の話を聞いてやりたいと思っていたが、服を脱ぎ捨てた黒二に抱き寄せられて諦めた。こんなに触れられては、もう我慢なんて出来ない。たっぷり黒二を味わいたい。 でも好きなのは体だけだ。黒二に対して恋愛感情はない。赤二ははっきりそう断言出来るが、関係を知っているどころか見たこともある檜扇は、そうは思っていなかったかもしれない。 三郎の帰宅時間をとうに過ぎるまで抱かれた後、赤二は独り言のように呟いた。 「私に妻を持つ資格があるのでしょうか」 「まだそんなことを言っているのか。おまえは大きな勘違いをしている」 赤二の体液を測定する作業を続けながら、黒二は続けた。 「選ぶ権利は貴人にある。求められたら食事を与え、龍を産んだら結婚する。それが男の義務だ。体液の不適合以外の理由でそれを拒んではならない」 「ですが……」 「檜扇には他の男も紹介したし、おまえと結婚するリスクも説明した。その上であいつはおまえを選んだ。つまり最初から長く平穏な人生など望んでいなかったということだ」 共に長く平穏に暮らすことを望んでいたのは自分だけ。 確かにそうかもしれない。産んだら死ぬかもしれないからこそ、檜扇は妊娠しても自分の生き方を貫いたのだろう。しかしそれを理解したところで、妻を失った悲しみも新たな妻を持つ不安も消えない。 赤二は黙って服を着ると、作業を続ける黒二に挨拶した。 「帰ります」 「ああ」 黒二は転送ゲートへの扉を開いてくれたが、赤二が扉に向かうと、引き留めるように声を掛けた。 「その貴人、持て余すならいつでも貰ってやるから連れてこい」
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