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第27章 剣術
学校から帰った三郎は、まだ黒い国から戻っていなかった赤二を待っている間に眠ってしまい、翌朝再び学校へ行く支度を手伝いに来た従者に起こされた。
「赤二はまだ帰って来ないの?」
「一度お戻りになりましたが、また出掛けられました」
「そう」
戻ったのに部屋に来てくれなかったと知り落胆した三郎に、従者は微笑みかけた。
「学校で体調を崩されたけれど、今は回復して眠っていらっしゃるとお伝えしたので、菊様がゆっくりお休みになれるようお部屋にいらっしゃらなかったのだと思います」
「そんな気遣い要らないのに」
話を聞いたなら尚更、心配して部屋に来て食事を与えて欲しかったと思ったが、従者に愚痴を言っても仕方ない。学校に行く支度をした三郎が、少し寂しい気持ちで転送ゲートに向かうと、雛罌粟が待っていてくれた。
「菊くん、おはよう。腕は大丈夫?」
「うん、もう大丈夫だよ。ありがとう」
「今日剣術やるの?」
「うん、やるよ」
三郎は元気に答えたが、雛罌粟は心配そうな顔で尋ねた。
「赤二様に止められなかった?」
「昨日会えなかったから……。でも本当にもう大丈夫だから問題ないよ」
「そう……」
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