227人が本棚に入れています
本棚に追加
「彼の方は君に興味がないようだな。彼は龍王様の后候補だ。あまり気さくに話しかけない方がいい」
「龍王様の?」
「ああ。龍王様の城に住んでいる。髪が少し銀色だっただろ?」
「そうか……そうだね」
龍王の城に住む貴人と赤い国に住む自分が学校以外の場所で出会うわけがない。よく似た誰かと勘違いしたのだろう。だとすればきっと本当に知っているのは赤い国の貴人だ。後で赤二に聞いてみようと考えて、三郎は思い出した。
「ところで黒百合、さっきの赤二と黒二様の話って……」
「ああ……あれは君を煽っただけだから気にするな。それより早く教室に戻ろう」
黒百合に手伝って貰って着替えを終えて道場を出る時、三郎は振り返ってもう一度あの貴人を見た。
「ねえ、彼の名前は?」
「俺から黒を取った花だよ」
「……百合?」
「ああ。行くぞ」
名前を聞いたら何か思い出せるかと思ったが、無理だった。三郎はひとまず諦めて教室に戻った。しかし剣術に比べれば普通の授業は退屈で、ついぼんやりあの貴人、百合のことや赤二のことを考えてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!