227人が本棚に入れています
本棚に追加
そして授業を終えて学校から帰ると、赤二が迎えてくれた。
「お帰り」
静かに微笑みかけられると、昨日から寂しかったことを自覚した三郎は、赤二に駆け寄り抱きついた。
「ずっと留守にしてすまなかった」
唯一覚えている愛しい男。しかしその体臭は、一昨日と少し違った。
「黒い国で、何してたの?」
いきなり質問されて動揺した赤二はいつものように三郎を抱き寄せて彼の視線から逃れようとしたが、それを察した三郎はするりと腕の中から抜け出して、赤二を睨んだ。
「どうしていつも何も話してくれないの? 俺、赤二のこと知りたいよ。色んな事忘れちゃったから、もう一度教えてよ」
「いつも……話してくれない?」
「そうだよ。いつも独りで悩んで、独りで決めて、俺には何も相談してくれない」
今三郎が話しているのは、恐らく黒龍が話していた桜という貴人のことだろう。そいつは俺じゃないと言う代わりにため息をついて、赤二は言った。
「じゃあ、俺の悩みを聞いてくれるか?」
三郎は驚いて目を見開いた後、大きく頷いた。
「見ての通り、俺は普通の赤い龍人ではない。学生時代に黒い龍の肉を食べ過ぎて半分黒くなってしまった。生きていくには赤い龍と黒い龍、両方の肉を食べなければならない」
「それで時々黒い国に行くの?」
最初のコメントを投稿しよう!