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「ああ。赤と黒の龍の肉を食べれば黒い肉を食べなくてもいいが、赤と黒の龍が成長するには黒い龍の餌も必要で、龍だけ黒い国に行かせるわけにいかないから、やはり通い続けないといけない」
「赤と黒の龍専用の餌場は作れないの?」
「一頭だけの為の餌場など贅沢過ぎる」
「じゃあもっと増やせばいいよ。赤と黒の龍だって一頭じゃ寂しいだろうし、俺が赤二の子を産めばいいんでしょ?」
「簡単に言うな!」
急に苛立った赤二が叫ぶと三郎は一瞬ビクリとしたが、負けずに言い返した。
「龍を産むのは大変なことだって言われたってわかんないよ。早く経験させてよ」
「産んだら死ぬ!」
再び叫んで三郎を大人しくすると、赤二は静かに話し始めた。
「混色の龍は、今世界にたった2頭しかいない。そもそも妊娠する確率が低い上に、出産時の致死率が高いからだ。過去の文献を調べてみたが、生涯に2頭以上産んだ貴人の記録は見つからなかった」
「じゃあ俺が歴史を変えるよ」
「おまえは何もわかってない!」
「わかるよ!」
三郎は、赤二に負けず声を張り上げた後、静かに語り始めた。
「死んだんだろ。俺の前に赤二が愛していた貴人が。なんか……少し思い出してきたよ。凄く綺麗な人だった。俺なんかよりずっと。俺は……赤二に対してとは違う気持ちで彼が好きだった。彼の身に何かあったって聞いて、俺……必死で……」
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