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「そうか。そう……だよね」
そんなことはわかっているはずなのに、剣を強く大きく振る癖がついている。
「赤二、俺……前に別の……」
「もうやめるか? もう一度入り直せば、またあいつが出てくるが」
「あ、ああ、やるよ」
質問を遮って決断を促された三郎は、素直に再び剣を構えた。そして同じ対戦相手が現れると、2回まで当たってもいいなんて甘い考えは捨てて防御を優先し、慎重に隙を狙った。しかし相手も最下位とはいえ超上級者だ。そう簡単には隙を見せない。それを見ていた赤二が声を掛けた。
「言い忘れたが、時間が決まっている。そろそろ攻撃しないと時間切れになるぞ」
「ええっ? そんなこと言われても……」
返事をしている間に相手の剣が迫ってきた。三郎はそれを間一髪で避けると同時に返り討ちした。
「やった!」
確かな手応えに三郎は喜んだが、攻撃を続けようとすると相手は消えてしまった。
「残念、時間切れだ」
「えー? じゃあもう1回やる!」
三郎は繰り返し挑んだが、なかなか速さに慣れない。
しかし幸い相手は決まったレベル以上に強くなることはない。諦めずに続ければ絶対勝てる。そう信じて戦い続けた三郎は、ついに時間内に同じ場所を3回攻撃することに成功した。
「やった、赤二見た?」
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