第27章 剣術

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「楽しそうだな」 赤二ではない声に三郎が振り向くと、赤二の隣に赤龍が立っていた。 「だが夢中になりすぎてはいけない。剣術にのめり込んだ貴人がここで死んだ」 「兄上、その話は……」 「おまえはもう一度あの光景を見たいのか?」 話をやめて貰おうとして逆に制された赤二は黙った。三郎は、深刻な空気の中で大人しく赤龍の話に耳を傾けた。 「その防具は、3回目の攻撃を受けた時にその部位の全防御力を発揮してどんなに強い剣でも跳ね返すと同時に連続攻撃不能にする。だから選手の体が傷つくことはない。しかし攻撃を受けたことを本人が自覚出来るように、一定の割合で衝撃が伝わるように出来ている。だから強い攻撃を受ければ、痛みを感じる。通常では問題ないが、妊娠している場合は別だ。防具の下腹部は衝撃を完全吸収するし、そもそも攻撃は禁止だが、龍がその範囲を超えて成長していれば龍も衝撃を受ける。胎内の龍に、痛くても大丈夫だから我慢してくれなんて伝えることは不可能だ。当然龍は暴れ出し、最悪の場合、貴人を切り裂いて逃げ出す」 赤二の前妻がどんな死に方をしたか知らされた三郎は青ざめた顔で赤二を見たが、彼は目を合わせてくれなかった。 「じゃあ……妊娠したら……止めればいいってことですよね?」 「そうだ。だが妊娠に気づく前に一気に龍が育つこともある。少しでも体に異変を感じたら線の後ろに下がれ。まあ、ここに独りで入らないことだ。いいな?」 「はい」 赤龍は、素直に返事をした三郎に頷くと、目を合わせない赤二には声を掛けずに妻が待つ部屋へ戻った。
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