第27章 剣術

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「今更お耳に入れるまでもないと思っていたのですが……以前あの訓練場を使っていた剣士と話す機会がありまして、檜扇の死についてどう思うか尋ねてみたところ、彼もやはり危険なプログラムが発動したのだろうと考えていました。彼はそのプログラムを体験してはいないそうですが、剣術大会優勝レベルの剣士との試合が最終課題ではないと、金龍様がおっしゃっていたそうです」 「金龍様から直接聞いたというのか?」 「はい。あそこはかつて全国大会への予選を勝ち抜いた者に解放されていた施設で、金龍様は時々視察にいらしていたそうです。それで通常プログラムを終了した彼は、これで終わりではない、おまえが望めば全く別の相手が現れると言われたそうです」 「つまり発動に必要なのは特別な技術ではなく意思ということか?」 「はい。彼にはなく、檜扇にはあった特別な意思です。檜扇は変わり者でしたからね。村の女が隠し育てていたと聞きましたが、そのせいでしょうか」 「ああ。特殊な貴人に育てる為、故意に放置されたのかもしれない。黒二ならやりかねない」 赤い体に戻すはずだった赤二がより黒くなっていくことに気づいて抗議に行った時、黒二は言い訳も詫びもせず、逆に説教してきた。 世界は新しい力を必要としている。赤二が赤と黒の龍人になることは、世界に飛躍的な進化をもたらす可能性がある。一国の長であるあなたが、世界の発展より弟の平穏な暮らしを望むのかと。 何の為に新しい力が必要なのかと赤龍が尋ねると、いずれ龍王様から詳しいお話と正式な指令が下されると言われた。その彼の言葉通り、程なく人間界の脅威と戦士について銀龍から説明があった。そして戦士は先代龍王である金龍が与えた武器を操るので万が一に備えて彼等にとって未知の敵となる新種の生物、可能であれば新種の龍を産み出すように命じられた。 黒二はその命を受けて赤二の嫁探しをしたと言うが、むしろそれは黒二の提案だったのではないかと赤龍は疑っている。黒二の兄、先代の黒龍は、銀龍を育てた校長だ。銀龍は若い長達よりも黒二を頼りにしているに違いないと。
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