第27章 剣術

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「女が子供を育てるのは人間界の子育てだ。檜扇がこの世界で育てられた戦士だったとすれば、特殊な意思というのは彼等と同じ志だろう。とすれば隠しプログラムが発動して現れるのは龍かもしれないな」 「銀龍様はご存じなのでしょうか?」 「俺にわかることが、銀龍様にわからないわけがないだろう」 「すみません。私には男の方の力の差を見極める能力がないものですから。私だけではありません。貴人にはわからないのです。相手と自分の正確な能力の差が」 カンナはそう答えて微笑んだ。 赤龍は、その妻の笑顔を見つめながらしばらく考えた後、その意味に気づいた。 「だから戦えるのか。どんなに強い相手でも、貴人なら怯むことなく立ち向かえるということか」 「ええ。普通に育った貴人はそんな野蛮なことはしませんけどね。戦士達は男の方から教育も愛情も受けていません。テリトリーに侵入してくる相手は、全て殺していい敵と見なして攻撃してくる。そういう意味では時に龍さえ倒してしまうこともある野獣と変わりません。それが龍王の力を宿した武器を手にしているのです。戦士を舐めていると、大変な事になるかもしれません」 その後作戦が開始されると実際苦戦を強いられ、捕獲出来た戦士はまだ2人だけだ。その1人である赤い髪の剣士を銀龍が自分に預けた意味を考えながら黙っていると、隣に座っていたカンナが立ち上がり、収納壁から果実を取り出した。 「実は今日、王都で古い友人に会ってきました。これは彼から貰った土産です」 キラキラと輝く果実。遠い昔、ただ一度しか見たことのないその果実を、赤龍は信じられない気持ちで受け取った。 「黄金の……リンゴ?」 「ええ。珍しいでしょう?」
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