第27章 剣術

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『青二には早く結婚して一人前の男になって欲しいです。赤二さんも無事結婚出来るといいですね』 そう言われて頷いた時、赤龍の頭の中には青二の顔も浮かんでいたが、それはまだ彼が学生だった頃の顔だった。 学生時代、青二は赤龍より上の学年の生徒だった。あまりの美しさに、初めて校内ですれ違った時には思わず声を掛けそうになったが、一緒にいた同級生に止められた。 『上級生はヤバいって。ほら、見てみろ』 通り過ぎた先で彼に声を掛け一緒に歩き出したのは、当時学内最強と言われていた黄一先輩、後の黄龍だった。長になった今では互角だが当時は素直に負けを認めるしかない相手だったし、本命は白い教師だったので、その時にはあんなに美しい人と仲良くしているのかとただ羨ましく思った。 あれだけ仲が良かったのだから、安否が気になるなら直接連絡したらいい。それなのにあの時敢えて青龍に彼の安否を尋ねた黄龍の意図は何だったのだろうと考えて、赤龍は閃いた。 (黄金のリンゴを持ち込んだのは青二か? 黄龍も青龍も、彼と連絡が取れずにいるのか?) 青二が、自分の龍の肉を食べたり友人と連絡を取ることが出来ない状態にあるとすれば、それは由々しきことだ。 「ありがとう。また何か情報を掴んだらすぐに知らせてくれ」 黄金のリンゴは激動の予兆ではないかと案じた赤龍の脳裏に、また銀龍の姿が浮かんできた。それを悟られる前にカンナを抱き寄せ頬に口づけると、赤龍はカンナの部屋から出ていった。
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