第28章 王の裁き

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第28章 王の裁き

首輪で繋がっていることを逆手に取って銀龍を攻撃しようと戦士の矢で自分の胸を貫いた次郎は銀龍に助けられたが、三郎同様記憶を封印されていた。そして次郎が体内から矢を出すことを知った椿は、より注意深く次郎を見守っていた。 「ただいま戻りました」 学校から戻ったら報告することを義務づけられている次郎が部屋に入ってくると、椿は優しい笑顔で尋ねた。 「お帰りなさい。今日はどうでした?」 「事故で記憶をなくしたという生徒に、どこかで会ったことはないかと尋ねられました」 三郎のことだとピンと来たが、椿は平静を装った。 「そうですか。それで、あなたも記憶を失っていると話したのですか?」 「いいえ。覚えがないと答えただけです。確かにどこかで見たような顔だとは思いましたが、興味がなかったので」 そう言うと、次郎はじっと椿の顔を見つめた。 「ああ、わかりました。彼はあなたに似ています。きっと彼も私を誰かと混同しているのでしょうね」 本当のことを言えない椿がただ静かに微笑んでいると、次郎は真顔のまま背を向けた。 「他に変わったことはありません。では――」 「その彼と話してみればいいじゃないですか。もしかしたら本当に知り合いかもしれませんよ?」 椿が呼び止めるように問いかけると、次郎はゆっくり振り返り、険しい表情で答えた。 「見ているだけで苛立つ貴人でした。知り合いだったとしたら忘れられて良かった。失礼します」
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