第28章 王の裁き

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「おまえはやはり、長失格だ」 上げた手を黄龍の足下に向かって振り下ろすと、そこに転送紋が刻まれ、黄龍は銀の草原に落とされた。そして銀の龍に取り囲まれた黄龍は、状況を理解する間もなく姿を消した。 それと同時に、黄色い国では黄龍の子供達が一斉に悲鳴を上げて、鳥たちと遊んでいた山吹は驚いて黄色い砂漠に駆け込んだ。 「お前達、一体どうした?」 先の后と自分が産んだ龍達が狂ったように砂漠に体を打ち付けている。巻き上がった砂埃はたちまち視界を黄色一色に塗りつぶした。 「落ち着いて、今黄龍を呼ぶから――うわっ!」 風に煽られて飛んだ山吹の体を、誰かの腕が抱き留めた。黄龍ではない。腕が細過ぎるし匂いも違う。 「黄龍様はもうお戻りになりませんよ。あの子達は、僕が貰います」 「は? 何言ってるんだ、黄一」 黄一(おういち)。真っ直ぐ切りそろえた前髪の下、長い睫の隙間からのぞく目は切れ長で、深い緑色だ。鼻梁は細く口は小さく顎は細い。それに体は華奢で男にすら見えないが、これでも一級の黄色い男だという。 しかし、彼はまだ学生のはずだ。若く尖った匂いに鼻をふさいで眉を顰めた山吹に、彼は勝ち誇った笑みを投げた。 「黄龍様はたった今この世から消えました。龍王様は僕に彼の子供達を服従させておまえが長になれと命じられました」 「そんな……」 黄一は、呆然と立ち尽くした山吹の耳に囁いた。 「ここは危ない。部屋で待っていて下さい。あなたももう、私のものです」 そう言い残すと黄一は砂嵐の中に消えた。
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