第28章 王の裁き

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その山吹が向かった戦士の城では、四郎と五郎が文献の解読を続けていた。 「結局ようわからんな。読めば読むほど、わからんなる」 五郎は項垂れた四郎の肩を抱いた。 「まだ全部読んだわけじゃない。突然一気にわかるかもしれないぞ」 五郎の慰めなど聞こえていないように、四郎は黙ってため息をついた。 あれ程陽気だった四郎が、最近笑わなくなった。 どうしようもなく三郎を見送り城に戻って数日経った夜からだ。その夜、自分の部屋で眠っていたはずの四郎が五郎の部屋に駆け込んできた。 「どうした?」 五郎が慌てて起きると、四郎は五郎に飛びつき彼を強く抱きしめた。 「良かった。夢やった」 「悪い夢を見たのか?」 「ああ、最悪な夢や。五郎ちゃんが書き置き残して出て行って、追いかけて外に出たら一歩先は闇やってん。何もない闇の中にこの城が浮いとるんや。怖かった。ほんまに怖かった」 叫ぶようにそう言うと、四郎は泣き出した。そして泣きじゃくりながら訴えた。 「俺、あかんのや。人が好きやから、寂しいのホンマに苦手で……正直五郎ちゃんと2人きりいうだけでもうキツい。あ、勘違いせえといてや。五郎ちゃんだからいうわけやなくて、誰でも同じや。なんぼ愛しとっても無理や。俺な、あなたさえいればいい言うタイプちゃうねん。せめて3人や。2人きりはあかん。まして独りぼっちなんて死んだ方がましや」 「心配するな。独りぼっちになんてさせない」 「約束やで」
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